d a y b y d a y
委員会の仕事を終え教室へと向かう空の前方に、
廊下の窓からグラウンドを眺める女生徒二人の姿があった。
名前までは知らないが顔はなんとなく見覚えがある。
おそらく後輩だろう、と空は思った。
少し興奮気味に話す彼女等は一体何を見ているのか。
空はその視線の先を追う。
真っ先に視界へ入ってきたのはミニゲームの最中であるサッカー部だった。
ボールと共に砂埃が舞う。
しかしそんな物はお構いなしといった様子で選手達は激しい攻防を繰り広げていた。
その中でも一際キレのあるプレーでずば抜けた存在感を放つ選手。
それは言うまでもなく、現キャプテンでありエースでもある八神太一であった。
また上手くなってる。
彼のプレーを見る度空は素直にそう思う。
あまりにも楽しそうにプレーする彼の姿は、
かつて選手として駆け回っていた彼女の身体をうずかせた。
笛の高音が鳴り響き、太一達は休憩に入るようでコート内から退いた。
選手がぞろぞろと校舎の方へ近付いてくる。
お疲れ。
止めていた足を再び動かし始めた、ちょうどその時。
「空っ!!」
窓から顔を覗かせて声の主を探すと、
タオルを肩にかけた汗だくの太一がこちらを見上げて立っていた。
こめかみに流れる滴が一滴、太一の元を離れて地へと消えた。
「委員会終わったんだよな?俺ももうすぐ終わるから、一緒に帰ろうぜ」
二階にまで聞こえるような声量で話しているため、
廊下にいた生徒には会話の内容が丸聞こえだ。
先程ミニゲームを観戦していた後輩達も、
ショックを受けたような顔で何やらひそひそと話している。
空は内心気恥ずかしかったが、
周りをまるで気にしない堂々とした太一の誘いに思わずふ、と吹き出してしまった。
「ばーか」
馬鹿ってなんだよ!と思いがけない返答に顔をしかめる太一。
声を出して笑った後「校門で待ってるね」とだけ言い残して、
空は今度こそ鞄が待つ教室へと歩き出した。
・・・・・・・・・・・・・
太一さんはモッテモテに違いない!!
空もこっそりモテてそう!
2008.11.24
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