開 け た く な い よ 。 だ け ど 、

 

 

     「…さん。…太一さんっ!」

     はっと我に返ると、俺のすぐ横には頬を膨らませたミミちゃんが立っていた。

     「もう!私の話聞いてるー!?」

     「ご、ごめん。」

     やっべ。全然聞いてなかった。

     俺の心の声が聞こえてしまったのか、

     ミミちゃんは一瞬俺を見つめ溜め息をついて

     もういい、と呆れたように言った。

     「だめだよ太一。人の話はしっかり聞かなきゃー。」

     ミミちゃんとは反対側の隣にいたアグモンはどこか楽しげに説教だ。

     まあ確かに。

     人の話はきちんと聞かなければいけない、なんて母さんに散々叱られてるから知ってるけど。

 

     「ところで太一さん」

     さっきまで怒ってたミミちゃんがいつの間にか普段の調子に戻っている。

     「今ぼーっと何見てたの?」

     すかさずアグモンが頭と肩にのしかかってきて俺の発言権を奪い取った。

     「空のこと見てたんだよ。ねー、太一。」

     「ばっ…!」

     渾身の力で頭を持ち上げアグモンを転げ落とした。

     でん、とにぶい音がして地面に落ちたアグモンが勢いで後ろ向きに一回転した。

     今の俺の顔は鏡を見なくても分かる。

     きっと耳まで真っ赤だ。

     そんな俺をははーん、と言った顔でにたにたと笑ってくるミミちゃん。

     「前からそうなのかなーとは思ってたけどお〜、太一さんてもしかして〜‥、」

     穴があったら入りたい。

     俺の今の気持ちはただそれだけだ。

     まるで全速力で走った後のように顔がほてって額に汗がじんわりと滲み出た。

     正直言って認めたくない。

     だって俺らはずっと、それこそ親友と言っても過言ではないくらい仲の良い友達だったから。

     その関係を崩してしまうことを俺は心の何処かで恐れてる。

     最悪な事態になるくらいならいっそ鍵でもかけて、奥底にしまい込んでいたかったんだ。

     「言っちゃえばいいのにー」

     きっと太一さんと空さんならお似合いなんだから、とミミちゃんはいわゆる告白、とやらを仕切りに俺に勧めてくる。

     きっとこの子はこうゆう話題に喰い下がるタイプだろう。

     未だ冷めやらぬ林檎色の顔の半分を右手で覆い隠した。

     指の隙間から見えたものは、俺たちの声が届かないくらいの場所で遊んでいるタケル、パタモン、

     そして2人(1人と1匹と言った方が適当か)の面倒を見ている空とピヨモン。

     ほんの数秒しか見ていなかったはずなのに、ピヨモンとばっちり目が合ってしまった。

     何を言っているかは全く分からない。

     だけどこっちを指差して空に何か言っている。

     ピヨモンの嘴が一通りの動きを終えると、今度は空も一緒に視線をこちらによこした。

     空の口が動いている。

     でも何を言ってるかはやっぱり分からない。

     空もすぐにそれを察したようで、喋るのを止めてしまった。

     代わりに右手を高くあげてゆっくりと弧を描き、楽しそうに笑った。

     瞬間、更に体温が上がってしまったことには当然誰も気付いていない。

     …俺以外。

 

     ・・・・・・・・・・・・・

     旅の途中で。

     2008.10.11

 

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