変 わ る 世 界 、 変 わ ら な い 場 所 、

 

 

 

      桜吹雪、というほどのものではないけれど。

 

      桜の花びらがあちこちで風に撒かれ、

 

      ふわりふわりと落ちてゆく。

 

      空は少し霞がかったような青空で、

 

      寝っ転がって見上げているとときどきピンクの粒が現れた。

 

      今日はぽかぽか気温のいい天気だ。

 

 

 

      ふわあ〜と大きな口を開けてあくびをした。

 

      そんな太一を隣で一緒に寝っころがっていた空が見る。

 

      「どうぞ寝てくださいって言ってるような天気だよなー」

 

      空は目を閉じた。

 

      太一の言う通り、こうしていればすぐに眠りにつけそうだ。

 

      「温かくていい気持ちよね」

 

 

 

      「もう春なんだな」

 

      ゆっくりとのびをして身体を伸ばす。

 

      ただでさえある空との身長差が一瞬さらに広まった。

 

      太一がちらりと隣に目をやると、 

 

      空はまっすぐに青空を見つめていた。

 

      彼もまた見慣れている彼女の横顔をじっと見つめる。

 

      彼女のその目は何か未知のものを見ている、

 

      そんな感じがした。

 

      「太一と同じ学校通うのも明日で最後だね」

 

      「…寂しいだろ?」

 

      「ぜーんぜん」

 

      なんだよ、と太一は口を尖らせる。

 

      空は笑った。

 

      そして嘘に決まってるでしょ、と付け足した。

 

      寂しくないわけがない。

 

      ふいに太一の温度が恋しくなって求めようと手を伸ばす。

 

      しかし先に相手を捕らえたのは太一だった。

 

      彼女が彼に触れるよりも先に

 

      彼が自身で彼女を包みこんだのだった。

 

      安心できる彼の匂いに空は体の力がふっと抜けるのを感じた。

 

      「ずっと、」

 

      太一の声は落ち着いていつもどおりだったが、

 

      空にはどこか寂しげに聞こえた。

 

      もしかしたら自分が寂しかったからそう聞こえただけしれない。

 

      だけどそのとき、瞬間的に、確かにそう感じとった。

 

      「ずっと、こうしてたい。」

 

      私も。

 

      口には出さなかったが胸の中で答えた。

 

      もぞもぞと動いて更に深く太一の中へ潜り込む。

 

      願わくば、この幸せな関係が一生、死ぬまで続きますように。

 

 

 

      穏やかな風がそよぐ。

 

      それは学校の屋上で寝る彼らの髪を優しくなでた。

 

      今日はぽかぽか気温のいい天気。

 

      明日もきっと晴れるだろう。

 

 

 

 

       ・・・・・・・・・・・・・

 

      中学の卒業式前日。

 

      なんて季節外れ!

 

      2008.09.21

 

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